年末調整の手続きと外国人が注意すべき点

日本で働く外国人向けに年末調整の手続き方法を徹底解説。居住者・非居住者の判定、必要書類、海外扶養親族の申告方法、よくある間違いと対策まで、年末調整をスムーズに進めるためのポイントを網羅的にまとめています。
年末調整の手続きと外国人が注意すべき点
日本で働く外国人にとって、毎年11月〜12月に行われる「年末調整(ねんまつちょうせい)」は避けて通れない重要な手続きです。年末調整とは、1年間に支払った所得税の過不足を精算する制度で、正しく手続きを行えば税金が還付されることもあります。しかし、外国人ならではの注意点も多く、知らずに損をしてしまうケースも少なくありません。この記事では、年末調整の基本的な流れから、外国人が特に気をつけるべきポイントまで、わかりやすく解説します。
年末調整とは?基本的な仕組みを理解しよう
年末調整(英語では「Year-End Tax Adjustment」、日本語の読みは「ねんまつちょうせい」)は、毎月の給与から天引きされている所得税の概算額と、実際に1年間で支払うべき所得税額との差額を精算する手続きです。
毎月の給与から引かれる所得税は、あくまで「概算」で計算されています。実際には、生命保険料控除や扶養控除などの各種控除を反映させると、納めるべき税額が変わります。この差額を年末に一括で調整するのが年末調整の役割です。
年末調整は雇用主(会社)が行う手続きであり、従業員自身が税務署に出向く必要はありません。ただし、従業員は会社に対して必要な書類を提出する義務があります。手続きは通常11月〜12月に行われ、雇用主は翌年の1月31日までに税務署へ提出します。
多くの場合、年末調整によって税金が還付(返金)されます。12月や1月の給与明細に「年末調整還付金」として記載されることが一般的です。詳しい税金の仕組みについては、日本の税金・確定申告完全ガイドもあわせてご覧ください。
外国人は年末調整の対象?居住者・非居住者の判定
年末調整の対象となるかどうかは、日本の税法上の「居住者」か「非居住者」かによって決まります。これは国籍ではなく、日本での滞在状況で判断されます。
居住者に該当する条件:
- 日本国内に住所がある方
- 日本に1年以上継続して居住している方
居住者であれば、日本人と同様に年末調整の対象となります。一方、非居住者(日本に1年未満の滞在で住所を持たない方)は、給与に対して一律20.42%の源泉徴収が行われ、年末調整は不要です。
| 区分 | 条件 | 年末調整 | 所得税率 |
|---|---|---|---|
| 居住者(永住者) | 日本に住所あり、または1年以上居住 | 必要 | 累進課税(5%〜45%) |
| 居住者(非永住者) | 居住者のうち、過去10年で5年以下の居住 | 必要 | 累進課税(国内源泉所得) |
| 非居住者 | 日本に住所なし、1年未満の滞在 | 不要 | 一律20.42% |
年末調整の対象外となるケース:
- 年収が2,000万円を超える場合
- 副業収入が20万円を超える場合(副業の確定申告が必要)
- 複数の会社から給与を受けている場合
- 年の途中で退職し、再就職していない場合
特に注意が必要なのは、年の途中で出国して非居住者になった場合です。この場合は、出国時点で年末調整を行う必要があります。帰国予定がある方は、帰国時の税金手続きも確認しておきましょう。
年末調整に必要な書類と準備するもの
年末調整では、会社から配布される書類に記入して提出します。外国人が準備すべき書類は以下のとおりです。
必ず提出する書類:
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書:扶養家族の情報を記入する書類です。日本国内・海外に扶養家族がいる場合はここに記載します。
- 給与所得者の保険料控除申告書:生命保険、地震保険などの保険料を支払っている場合に使用します。
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書:基礎控除や配偶者控除を申告するための書類です。
場合によって必要な書類:
- 住宅借入金等特別控除申告書:住宅ローンを利用している場合(2年目以降)
- 保険料控除証明書:保険会社から届く証明書の原本
- マイナンバー関連書類:マイナンバーカードまたは通知カードのコピー
マイナンバーについては、日本に中長期在留する外国人にも発行されます。源泉徴収票や各種申告書にマイナンバーの記載が必須ですので、まだ取得していない方は早めに手続きを行いましょう。銀行口座の開設時にもマイナンバーが必要になるケースが増えています。
海外の扶養親族を申告する際の注意点
外国人の年末調整で最も注意が必要なのが、海外に住む家族を扶養親族として申告する場合です。正しい書類を準備しないと控除が認められません。
必要な書類:
- 親族関係書類:扶養する親族との関係を証明する公的書類(出生証明書、婚姻証明書、戸籍謄本に相当するものなど)
- 送金関係書類:扶養親族に対して生活費を送金していることを証明する書類(銀行の送金明細書、クレジットカードの利用明細書など)
- 日本語翻訳:上記書類が外国語の場合、必ず日本語の翻訳文を添付する必要があります
| 書類 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 親族関係書類 | 出生証明書、婚姻証明書、公証された家族証明書 | 原本またはコピー、日本語翻訳必須 |
| 送金関係書類 | 銀行振込明細、Western Union明細、クレジットカード明細 | 各扶養親族ごとに1件以上の送金記録が必要 |
| 翻訳文 | 上記書類の日本語訳 | 翻訳者の氏名・住所を記載 |
2020年の税制改正により、30歳以上70歳未満の国外居住親族を扶養控除の対象とするには、以下のいずれかに該当する必要があります:
- 留学により国外に居住している(留学ビザの証明が必要)
- 障害者である
- 38万円以上の送金を受けている
この改正は外国人にとって大きな影響があるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
外国人の年末調整でよくある間違いと対策
外国人が年末調整で陥りやすい間違いをまとめました。事前に知っておくことで、トラブルを防ぎましょう。
間違い1:住居費などの現物支給を申告しない
会社から住居費、水道光熱費、教育費などを支給されている場合、これらも給与所得として課税対象になります。源泉徴収の計算に含めなければならないため、申告漏れがないよう注意してください。
間違い2:租税条約の適用を忘れる
日本は多くの国と租税条約を締結しています。租税条約に基づく免税措置を受けられる場合がありますが、年末調整の前に「租税条約に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があります。
間違い3:海外送金の記録を保管していない
海外の家族に送金している場合、送金記録は扶養控除の重要な証拠となります。毎回の送金明細を確実に保管しておきましょう。
間違い4:確定申告が必要なケースを見落とす
年末調整だけでは対応できない控除もあります。例えば、医療費控除やふるさと納税の寄附金控除は、年末調整では申告できず、確定申告が必要です。
間違い5:書類の提出期限を過ぎてしまう
年末調整の書類は通常11月中旬〜12月初旬までに提出を求められます。期限を過ぎると年末調整を受けられず、自分で確定申告を行う必要が出てきます。
年末調整の具体的な流れとスケジュール
年末調整の手続きは、以下のスケジュールで進みます。事前に流れを把握しておくことで、慌てずに対応できます。
| 時期 | やるべきこと |
|---|---|
| 10月〜11月初旬 | 保険会社から「控除証明書」が届く。紛失しないよう保管 |
| 11月中旬 | 会社から年末調整の書類が配布される |
| 11月下旬〜12月初旬 | 必要書類を記入して会社に提出(締切厳守) |
| 12月の給与支給日 | 年末調整の結果が反映され、還付金または追加徴収が行われる |
| 翌年1月 | 会社から源泉徴収票を受け取る |
| 翌年2月16日〜3月15日 | 確定申告が必要な場合はこの期間に申告 |
外国人向けの追加タスク:
- 海外の親族関係書類の翻訳を事前に準備(翻訳に時間がかかるため、10月頃から準備開始を推奨)
- 海外送金の明細を1年分まとめておく
- マイナンバーカードの取得状況を確認
年末調整後に確定申告が必要なケース
年末調整を行った後でも、以下に該当する場合は確定申告(かくていしんこく)を行う必要があります。
- 医療費が年間10万円を超えた場合:医療費控除を受けるために確定申告が必要です
- ふるさと納税を行った場合:ワンストップ特例制度を利用しない場合、確定申告で寄附金控除を申告します
- 副業収入が20万円を超えた場合:給与以外の所得について申告が必要です
- 住宅ローン控除の初年度:1年目は確定申告が必要(2年目以降は年末調整で対応可能)
- 年の途中で転職した場合:前職の源泉徴収票が間に合わなかった場合
外国人の場合、母国で支払った税金との二重課税を避けるために、外国税額控除を確定申告で申請することもあります。租税条約と二重課税の回避方法について詳しく知りたい方は、関連記事をご確認ください。
年末調整をスムーズに行うためのチェックリスト
最後に、外国人が年末調整をスムーズに進めるためのチェックリストをまとめます。
- [ ] 自分が「居住者」に該当するか確認した
- [ ] マイナンバーを取得・確認した
- [ ] 保険料控除証明書を保管している
- [ ] 海外の扶養親族の書類(親族関係書類+送金関係書類)を準備した
- [ ] 上記書類の日本語翻訳を用意した
- [ ] 住居費・光熱費などの現物支給を把握している
- [ ] 租税条約による免除の適用可否を確認した
- [ ] 書類の提出期限を確認した
- [ ] 確定申告が別途必要なケースに該当しないか確認した
年末調整は一見複雑に見えますが、事前の準備と正しい知識があればスムーズに進められます。不明な点がある場合は、会社の人事・経理担当者や税理士に相談することをおすすめします。
日本の税金の種類と納税義務や使える税金控除の一覧もあわせて確認して、賢く節税しましょう。
関連記事

日本の税金の種類と外国人の納税義務
日本で暮らす外国人が知っておくべき税金の種類と納税義務を詳しく解説。所得税、住民税、消費税、社会保険料の仕組みから、居住者・非居住者の分類、確定申告の必要性、租税条約による二重課税回避まで、外国人のための税金ガイドです。
続きを読む →
所得税の計算方法と税率の仕組み
日本の所得税の計算方法、7段階の累進課税税率、外国人の在留資格別の課税ルールをわかりやすく解説。年収別シミュレーションや2025年度税制改正の変更点、使える控除の一覧も紹介します。確定申告に必要な知識を網羅した完全ガイドです。
続きを読む →
確定申告のやり方とe-Taxの使い方ガイド
外国人向けに確定申告のやり方とe-Taxの使い方をステップごとに解説。必要書類一覧、マイナンバーカードの準備方法、よくある間違い、控除の活用法まで、日本での確定申告が初めての方にもわかりやすく紹介します。
続きを読む →
住民税の仕組みと支払い方法の解説
日本に住む外国人向けに、住民税の仕組み・計算方法・支払い方法を徹底解説。特別徴収と普通徴収の違い、ふるさと納税による節税方法、非課税条件、帰国時の注意点まで、住民税に関するすべての疑問を解消する完全ガイドです。
続きを読む →
ふるさと納税の外国人向け完全ガイド
外国人でも利用できるふるさと納税の仕組み、条件、やり方をステップバイステップで解説。ワンストップ特例と確定申告の違い、年収別の控除上限額、人気の返礼品ランキングまで、外国人に必要な情報をすべて網羅した完全ガイドです。
続きを読む →
消費税・軽減税率の基礎知識
日本の消費税10%と軽減税率8%の違いを外国人向けにわかりやすく解説。対象品目、テイクアウトとイートインの税率の違い、一体資産の判定ルール、免税制度の最新情報まで、日本生活に必要な消費税の知識をまとめました。
続きを読む →