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日本の年金・社会保障制度ガイド

脱退一時金の申請方法と受給条件

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年3月2日
脱退一時金の申請方法と受給条件

日本で働いていた外国人が帰国時に受け取れる脱退一時金について、受給条件・申請方法・必要書類・計算方法を徹底解説。2026年4月の制度改正(上限8年へ拡大・再入国許可の制限)も最新情報を網羅しています。

脱退一時金の申請方法と受給条件|外国人が知っておくべき全手順

日本で働いていた外国人が帰国する際、支払ってきた年金保険料の一部を取り戻せる制度が「脱退一時金」です。しかし、申請方法や受給条件を正しく理解していないと、せっかくの権利を失ってしまうこともあります。

この記事では、日本の年金制度の基本を踏まえながら、脱退一時金の受給条件、申請の流れ、必要書類、計算方法、そして2026年4月の制度改正による重要な変更点まで、外国人の方にわかりやすく徹底解説します。

脱退一時金とは?制度の基本を理解しよう

脱退一時金(だったいいちじきん)とは、日本の公的年金制度(国民年金と厚生年金)に加入していた外国人が、日本を離れる際に年金保険料の一部を一時金として受け取れる制度です。

日本の年金制度では、原則として10年以上保険料を納めないと老齢年金を受給できません。短期間しか日本に滞在しない外国人にとって、支払った保険料がそのまま消えてしまうのは大きな不利益となります。この問題を解消するために設けられたのが脱退一時金制度です。

脱退一時金は「国民年金」と「厚生年金」それぞれに存在し、両方に加入していた場合は別々に申請する必要がある点に注意してください。日本年金機構(Japan Pension Service)の公式サイトで詳細を確認できます。

脱退一時金の受給条件を詳しく解説

脱退一時金を受け取るためには、以下のすべての条件を満たす必要があります。

国民年金の脱退一時金の受給条件

条件詳細
国籍日本国籍を有しないこと
加入期間国民年金の保険料納付済期間が6ヶ月以上あること
年金受給権老齢基礎年金の受給資格(10年以上)を満たしていないこと
住所要件日本国内に住所を有していないこと
申請期限日本に住所を有しなくなった日から2年以内
障害年金障害基礎年金の受給権を有したことがないこと

厚生年金の脱退一時金の受給条件

条件詳細
国籍日本国籍を有しないこと
加入期間厚生年金保険の被保険者期間が6ヶ月以上あること
年金受給権年金の受給資格を満たしていないこと
住所要件日本国内に住所を有していないこと
申請期限資格喪失日から2年以内

重要ポイント: 社会保障協定のある国の出身者は、年金加入期間を母国と通算できる場合があります。脱退一時金を受け取ると、その期間の加入記録が消えてしまうため、協定国の方は慎重に判断する必要があります。

脱退一時金の金額はいくら?計算方法を解説

脱退一時金の支給額は、国民年金と厚生年金で計算方法が異なります。

国民年金の計算方法

国民年金の脱退一時金は、保険料を納めた月数に応じて、以下のように定額で支給されます。

保険料納付済月数支給額の目安(2025年度)
6ヶ月以上12ヶ月未満約50,940円
12ヶ月以上18ヶ月未満約101,880円
18ヶ月以上24ヶ月未満約152,820円
24ヶ月以上30ヶ月未満約203,760円
30ヶ月以上36ヶ月未満約254,700円
36ヶ月以上(上限60ヶ月)加入期間に応じて増加

※金額は年度ごとの保険料額により変動します。

厚生年金の計算方法

厚生年金の脱退一時金は、以下の計算式で算出されます。

支給額 = 平均標準報酬額 × 支給率

支給率は「保険料率 × 1/2 × 支給率計算に用いる数」で決まります。つまり、給与水準が高かった方や加入期間が長かった方ほど、受け取れる金額が多くなります。

具体的な計算例として、外国人脱退一時金サービスのサイトでシミュレーションが可能です。

脱退一時金の申請に必要な書類一覧

申請をスムーズに進めるために、以下の書類を事前に準備しましょう。

必要書類備考
脱退一時金請求書日本年金機構のウェブサイトからダウンロード可能
パスポートの写し氏名・生年月日・国籍・署名・在留資格の確認できるページ
日本国内に住所を有しなくなったことを証明する書類住民票の除票など
銀行口座の証明書類銀行名・支店名・口座番号がわかる書類(海外口座可)
年金手帳または基礎年金番号通知書基礎年金番号が確認できるもの
委任状(代理人申請の場合)本人が署名したもの

注意点: 書類は日本語以外で記載されている場合、日本語訳の添付が必要になることがあります。また、銀行口座は日本の銀行口座でなくても、海外の銀行口座を指定することも可能です。

脱退一時金の申請手続きの流れ【ステップバイステップ】

脱退一時金の申請は、以下の手順で行います。

ステップ1:帰国前の準備

帰国する前に、以下の準備を済ませておきましょう。

  • 転出届の提出: 市区町村役場で転出届(海外転出届)を提出する
  • 年金手帳の確認: 基礎年金番号を確認し、手帳を紛失していれば再発行を申請する
  • 必要書類の収集: 上記の書類一覧を参考に、書類を揃える
  • 銀行口座の準備: 受け取り用の銀行口座情報を整理する

ステップ2:帰国後に申請書を提出

日本を出国した後、2年以内に以下の方法で申請書を提出します。

  • 郵送申請: 日本年金機構に書類を郵送する(最も一般的)
  • 電子申請: マイナポータルを利用した電子申請(対応状況は要確認)
  • 窓口提出: 一時的に日本を訪問する場合、年金事務所で直接提出可能

郵送先: 〒168-8505 東京都杉並区高井戸西3-5-24 日本年金機構 本部

ステップ3:審査と支給

申請書類が受理されると、日本年金機構が審査を行います。審査完了まで約4〜6ヶ月かかります。審査が通れば、指定した銀行口座に一時金が振り込まれます。

なお、脱退一時金からは20.42%の所得税が源泉徴収されます。この税金は、確定申告を行うことで還付を受けられる場合があります。税務代理人を選任しておくと、帰国後でも還付申告が可能です。

2026年4月の制度改正による重要な変更点

2026年4月1日から、脱退一時金制度に大きな改正が施行されます。帰国を予定している外国人は、これらの変更点を必ず確認してください。

支給上限期間の引き上げ

項目改正前(現行)改正後(2026年4月〜)
支給上限期間5年(60ヶ月)8年(96ヶ月)

これにより、長期間日本で働いた外国人でも、より多くの保険料が還付される可能性があります。この改正は、特定技能ビザなどで日本に長期滞在する外国人労働者の増加を背景に行われました(参考:柳田事務所)。

再入国許可付き出国者への制限

改正後は、再入国許可(みなし再入国許可を含む)を受けて出国した場合、その許可の有効期間内は脱退一時金を受給できなくなります。

  • 改正前: 再入国許可付きで出国しても脱退一時金の請求が可能
  • 改正後: 再入国許可の有効期間が経過するまで請求不可(期限を超えて再入国しなかった場合は請求可能)

この変更は非常に重要で、一時帰国のつもりで再入国許可を取得した場合、すぐには脱退一時金を申請できなくなります。完全に帰国する場合は、再入国許可を取得せずに出国することを検討しましょう。

脱退一時金の申請で注意すべきポイント

社会保障協定国の方は要注意

日本と社会保障協定を結んでいる国(ドイツ、アメリカ、イギリス、韓国、フランスなど約20カ国以上)の出身者は、脱退一時金を受け取ると日本での年金加入期間がリセットされます。将来的に母国の年金と通算できる可能性がある場合は、脱退一時金を受け取らない方が有利な場合もあります(参考:マイナビグローバル)。

税金の還付申告を忘れずに

脱退一時金から源泉徴収される20.42%の所得税は、納税管理人を選任して確定申告を行うことで還付される可能性があります。帰国前に税務代理人(税理士など)に依頼しておくと安心です(参考:国税庁)。

申請期限の厳守

日本を離れてから2年を過ぎると請求権が消滅します。帰国後は早めに手続きを開始することをおすすめします。

企業年金・確定拠出年金との関係

公的年金の脱退一時金とは別に、企業年金や確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)にも脱退一時金の制度があります。加入していた方は、それぞれ別途手続きが必要です。

よくある質問(FAQ)

Q:脱退一時金は日本国内にいながら申請できますか? A:いいえ、日本国内に住所がある間は申請できません。転出届を提出し、日本を出国してから申請する必要があります。

Q:国民年金と厚生年金の両方に加入していた場合は? A:それぞれ別々に請求書を提出する必要があります。ただし、同じ封筒で同時に郵送することは可能です。

Q:申請してからどのくらいで受け取れますか? A:書類の受理から審査完了まで約4〜6ヶ月かかります。書類に不備があるとさらに時間がかかるため、事前確認が重要です。

Q:受け取り口座は日本の銀行でなければなりませんか? A:いいえ、海外の銀行口座でも受け取り可能です。ただし、送金手数料は受取人負担となる場合があります。

Q:脱退一時金を受け取った後、再び日本で働くことになったらどうなりますか? A:脱退一時金を受け取ると、その期間の年金加入記録は消えます。再び日本で働く場合は、新たに年金に加入し直すことになります。

まとめ:帰国前にしっかり準備して脱退一時金を受け取ろう

脱退一時金は、日本を離れる外国人にとって大切な権利です。特に2026年4月からの制度改正により支給上限が8年に拡大される一方、再入国許可付き出国に関する制限も加わります。

帰国を検討している方は、以下のチェックリストを参考にしてください。

  • ✅ 受給条件(6ヶ月以上加入、10年未満、2年以内の申請)を確認
  • ✅ 社会保障協定国の場合は、通算制度との比較を検討
  • ✅ 必要書類(請求書、パスポート、口座情報、年金手帳)を準備
  • ✅ 転出届を市区町村役場に提出
  • ✅ 税務代理人の選任を検討(所得税の還付のため)
  • ✅ 帰国後、速やかに請求書を郵送

年金制度全体については日本の年金・社会保障制度ガイドで詳しく解説しています。また、年金の支払い方法と免除申請についても確認しておくと、より理解が深まるでしょう。

帰国準備の全体像については、日本からの帰国準備・退出手続きガイドもぜひご覧ください。

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、日本企業・外資系企業で11年の実務経験。外国人の日本生活情報を発信。

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