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日本での老後・リタイアメント計画ガイド

国際カップルの老後計画と準備

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年3月2日
国際カップルの老後計画と準備

国際カップル・国際結婚夫婦のための老後計画完全ガイド。日本と海外の年金制度、社会保障協定の活用、医療保険の選び方、住む場所の比較、老後資金の準備方法を詳しく解説。30代から始められるアクションプランも紹介します。

国際カップルの老後計画と準備:安心できるリタイアメントのためのガイド

国際カップルにとって、老後の生活計画は一般的な日本人夫婦よりも複雑です。「どの国で暮らすのか」「年金はどうなるのか」「医療制度はどちらの国を使うのか」など、考えるべきことが数多くあります。日本では65歳以上の人口が約29%に達し、年金制度への圧力が増す中、早めの準備がますます重要になっています。

この記事では、国際カップルが知っておくべき老後計画のポイントを、年金制度・医療保険・住む場所の選択・資金計画などの観点から詳しく解説します。パートナーと一緒に将来を見据えた具体的なプランを立てましょう。

国際カップルの老後計画が複雑になる理由

国際カップルの老後計画には、同じ国籍のカップルにはない特有の課題があります。主な理由は以下の通りです。

二つの国の制度を理解する必要がある:日本とパートナーの母国の年金制度・医療制度・税制がそれぞれ異なるため、両方を把握した上で最適な選択をしなければなりません。

住む場所の選択肢が多い:日本で暮らし続けるのか、パートナーの母国に移住するのか、あるいは第三国を選ぶのか。この決断が老後の生活の質を大きく左右します。

言語と文化の壁:どちらの国で暮らすにしても、一方のパートナーが外国語環境で老後を過ごすことになり、医療や行政サービスを受ける際に困難が生じる可能性があります。

家族との距離:子どもや親族が複数の国に分散していることが多く、老後のサポート体制を考える際に地理的な問題が出てきます。

これらの課題を踏まえて、早い段階からパートナーと話し合い、計画を立てることが大切です。詳しい国際結婚の手続きについてはこちらをご覧ください。

年金制度を理解する:日本と海外の仕組み

老後の収入の柱となるのが年金です。国際カップルは、日本の年金制度と相手国の制度の両方を理解しておく必要があります。

日本の年金制度の基本

日本の年金は大きく分けて2種類あります。

年金の種類対象者加入期間受給開始年齢特徴
国民年金(基礎年金)20〜59歳の全住民最低10年(満額は40年)65歳自営業・無職・学生も対象
厚生年金会社員・公務員勤務期間中65歳給与に応じた保険料、国民年金に上乗せ

重要なポイント外国人配偶者も日本在住であれば国民年金への加入が義務です。パートナーが日本に住んでいる限り、保険料を支払う必要があります。

社会保障協定の活用

国際カップルにとって非常に重要なのが社会保障協定です。日本は現在、以下の国々と協定を締結しています。

協定国主な内容
アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・カナダ二重加入の防止+期間通算
オーストラリア・韓国・ベルギー・オランダ二重加入の防止+期間通算
チェコ・スペイン・アイルランド・ブラジル・スイス二重加入の防止+期間通算

この協定により、両国の年金加入期間を通算してカウントでき、保険料の二重払いも避けられます。例えば、アメリカで15年、日本で15年働いた場合、合計30年としてカウントされます。

詳しくは年金制度の基本と外国人の加入義務社会保障協定のある国と手続きガイドをご参照ください。

脱退一時金について

日本を離れる場合、一定条件を満たせば脱退一時金を受け取ることができます。ただし、この一時金を受け取ると日本での加入期間がリセットされるため、将来的に日本の年金を受給する可能性がある場合は慎重に判断しましょう。

老後の医療制度と保険の選び方

健康管理は老後の最重要課題です。国際カップルは医療制度の選択にも注意が必要です。

日本の医療制度のメリット

日本の医療制度は世界的にも優れており、老後に日本で暮らすことの大きなメリットです。

  • 自己負担率が低い:70歳以上は医療費の2割負担(現役並み所得者は3割)、75歳以上は1割負担
  • 高額療養費制度:月額の自己負担に上限があり、高額な治療費も安心
  • 国民皆保険:すべての住民が公的医療保険に加入

日本で暮らし続ける場合、国民健康保険に加入することで、これらの制度を利用できます。

海外移住の場合の医療保険

パートナーの母国や第三国に移住する場合、日本の健康保険からは脱退することになります。移住先の医療制度を事前に調査し、民間の医療保険の加入も検討しましょう。

注意点

介護保険について

日本では40歳以上の住民は介護保険に加入します。65歳以降に要介護認定を受ければ、介護サービスを1〜3割の自己負担で利用できます。これも日本で老後を過ごす大きなメリットの一つです。

老後をどこで過ごすか:住む場所の選択

国際カップルにとって最も大きな決断の一つが「老後をどこで暮らすか」です。それぞれの選択肢のメリット・デメリットを整理します。

選択肢メリットデメリット
日本に住み続ける医療制度の充実、治安の良さ、インフラが整備外国人パートナーの言語問題、家族との距離
パートナーの母国に移住パートナーの家族と近い、言語の壁が一方のみ日本の医療・年金が使えない、移住手続き
第三国に移住新しい生活、物価が安い国も選べる両方の家族と遠い、ビザ取得の課題
二拠点生活両方の国の良い点を活用できるコストが高い、移動の負担、保険の複雑さ

日本で老後を過ごす場合のポイント

日本を選ぶ場合、以下の点を確認しましょう。

海外移住を検討する場合

老後の海外移住を検討する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 物価上昇リスク:東南アジアでは物価が年3〜5%上昇している国もあり、将来的に生活費が増える可能性がある
  • ビザの要件:リタイアメントビザの経済要件(預貯金や年金額)を満たす必要がある
  • 帰国時の銀行口座帰国時の手続きも事前に確認

老後に必要な資金と貯蓄計画

2019年に話題になった「老後2000万円問題」は、国際カップルにとってもリアルな課題です。

必要資金の目安

日本で暮らす場合の月々の生活費目安を確認しましょう。

項目月額目安(夫婦二人)
住居費5万〜10万円
食費4万〜6万円
医療費1万〜3万円
光熱費・通信費2万〜3万円
交通費1万〜2万円
交際費・娯楽費2万〜4万円
その他1万〜3万円
合計16万〜31万円

国民年金の満額受給額は月額約6.5万円(一人分)なので、夫婦二人で約13万円。厚生年金に加入していた場合は上乗せがありますが、それでも資産運用や貯蓄で不足分を補う必要があります。

国際カップル特有の追加費用

一般的な老後資金に加え、国際カップルには以下のような追加費用も考慮が必要です。

  • 帰国費用:パートナーの母国への定期的な帰省(年1〜2回)
  • 翻訳・通訳費用:重要な書類の翻訳など
  • 為替リスク海外送金時の為替変動
  • 国際電話・通信費:海外の家族とのコミュニケーション

資金計画のステップ

  1. 現在の資産を棚卸しする:日本と海外の預貯金・投資・不動産を一覧化
  2. 年金受給額を試算する:日本の「ねんきんネット」と相手国の制度で確認
  3. 必要な生活費を算出する:住む場所に応じた月々の支出を計算
  4. 不足額を把握する:年金収入と支出の差額を明確にする
  5. 貯蓄・投資計画を立てるNISAやiDeCoなどの制度を活用

遺言・相続の国際的な問題

国際カップルの場合、相続に関しても二つの国の法律が絡んでくるため、早めの準備が重要です。

相続で気をつけるべきポイント

  • 準拠法の問題:日本では被相続人の国籍法が適用される(法の適用に関する通則法第36条)
  • 遺言書の作成:日本の法律に基づいた遺言書と、パートナーの母国の法律に基づいた遺言書の両方を作成しておくと安心
  • 相続税の違い:日本の相続税は累進課税で最高55%。配偶者控除(1億6千万円まで非課税)はあるが、両国での課税リスクに注意
  • 不動産の相続:日本の不動産は日本法、海外の不動産は現地法が適用される場合が多い

専門家(国際法務に詳しい弁護士や行政書士)に相談することを強くおすすめします。

今日から始められる具体的なアクションプラン

老後計画は早く始めるほど有利です。以下のアクションプランを参考に、できることから始めましょう。

30〜40代のうちに

  • [ ] パートナーと「老後をどこで暮らすか」を話し合う
  • [ ] 両国の年金制度を調べ、加入状況を確認する
  • [ ] 社会保障協定の有無と内容を確認する
  • [ ] 老後資金の積立を開始する(NISAやiDeCoの活用)
  • [ ] 永住権の取得を検討する

50代になったら

  • [ ] 年金受給額の具体的な試算をする
  • [ ] 遺言書の作成を検討する
  • [ ] 住む場所の最終判断に向けて現地調査を行う
  • [ ] 介護保険の内容を理解する
  • [ ] 民間の医療保険や生命保険を見直す

60代の退職前後

  • [ ] 年金の受給手続きを行う(必要なら両国で申請)
  • [ ] 税金の手続きを確認する
  • [ ] 住む場所を確定し、必要な引越し手続きを進める
  • [ ] かかりつけ医を見つける
  • [ ] 地域のコミュニティに参加し、サポートネットワークを構築する

まとめ:パートナーとの早めの対話が鍵

国際カップルの老後計画は、年金・医療・住む場所・資金・相続など、考えるべきテーマが多岐にわたります。しかし、最も大切なのはパートナーとの継続的な対話です。

国際結婚の先輩たちの経験から学べることは、「早めに計画を立て、定期的に見直す」ことの重要性です。完璧なプランを作る必要はありません。まずは今日、パートナーと「老後をどこで過ごしたい?」という会話を始めてみてください。

二人で力を合わせれば、どの国で暮らすことになっても、安心で充実した老後を迎えることができるはずです。老後の資金計画年金の受給資格についても、ぜひ合わせてご確認ください。

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、日本企業・外資系企業で11年の実務経験。外国人の日本生活情報を発信。

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