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日本の年金・社会保障制度ガイド

年金の受給資格と将来の計画の立て方

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年3月2日
年金の受給資格と将来の計画の立て方

日本で暮らす外国人のための年金受給資格と将来設計の完全ガイド。国民年金・厚生年金の受給条件、脱退一時金の手続き、社会保障協定の活用法、iDeCo・NISAを使った資産形成戦略まで、具体的な数字とステップで解説します。

年金の受給資格と将来の計画の立て方|外国人のための完全ガイド

日本で暮らす外国人にとって、年金制度の理解と将来の資金計画は非常に重要なテーマです。「年金を払っているけど、本当にもらえるの?」「帰国する場合はどうなる?」「老後の資金はいくら必要?」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。

この記事では、外国人が知っておくべき年金の受給資格から、具体的な将来設計の方法まで、わかりやすく解説します。日本に長期滞在する方も、いずれ帰国を予定している方も、ぜひ最後まで読んで自分に合った計画を立ててみてください。

日本の年金制度の基本構造を理解しよう

日本の年金制度は大きく分けて「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造になっています。外国人であっても、日本に住所がある20歳以上60歳未満のすべての方は、国民年金への加入が義務付けられています。

国民年金(基礎年金) は、自営業者・フリーランス・学生など、すべての住民が対象です。2025年度の保険料は月額17,510円で、毎年改定されます。

厚生年金 は、会社員や公務員が加入する年金で、給料から天引きされます。保険料は給与の約18.3%で、雇用主と折半になります。厚生年金に加入すると、国民年金にも自動的に加入していることになるため、将来は基礎年金と厚生年金の両方を受給できます。

外国人も日本人と全く同じ条件で加入し、同じ条件で受給できるのが日本の年金制度の特徴です。在留資格の種類に関係なく、受給資格が認められます。年金制度の全体像については、日本の年金・社会保障制度ガイドで詳しく解説しています。

年金の受給資格|外国人が満たすべき条件

年金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。

老齢基礎年金の受給条件

最も重要な条件は、保険料納付済期間が合計10年(120ヶ月)以上 あることです。この条件は2017年8月に改正され、それ以前の25年から大幅に短縮されました。これにより、以前は受給資格を得るのが困難だった外国人にも、年金受給のチャンスが広がっています。

受給開始年齢は原則65歳ですが、60歳から繰り上げ受給、75歳まで繰り下げ受給も可能です。

項目詳細
最低加入期間10年(120ヶ月)※2017年以前は25年
受給開始年齢原則65歳
繰り上げ受給60歳から可能(減額あり)
繰り下げ受給75歳まで可能(増額あり)
2025年度満額受給額年額831,700円(月額約69,308円)
国民年金保険料(2025年度)月額17,510円
厚生年金保険料率給与の18.3%(労使折半)

社会保障協定による期間通算

日本は24カ国と社会保障協定を締結しています。この協定により、母国での年金加入期間と日本での加入期間を通算して、受給資格の判定に使うことができます。

例えば、母国で7年間年金に加入し、日本で3年間加入した場合、合計10年となり、日本の年金受給資格を満たすことができます。協定締結国にはアメリカ、イギリス、カナダ、ドイツ、フランス、オーストラリア、韓国などが含まれます。

ただし、脱退一時金を受け取ると、その期間は通算対象から外れるため注意が必要です。

脱退一時金|帰国する場合の選択肢

日本を離れる予定の外国人には、「脱退一時金」という制度があります。年金保険料の一部を払い戻してもらえる仕組みで、以下の条件を満たす必要があります。

脱退一時金の申請条件:

  • 日本国籍を有していないこと
  • 国民年金または厚生年金の被保険者でないこと
  • 年金の加入期間が6ヶ月以上あること
  • 老齢年金の受給資格(10年)を満たしていないこと
  • 日本に住所を有しないこと(出国後に申請)
  • 出国後2年以内に請求すること

脱退一時金の注意点:

脱退一時金で受け取れるのは最大60ヶ月(5年)分の保険料相当額です。それ以上の期間加入していた場合、超過分は戻ってきません。

また、厚労省の制度改正により、再入国する可能性がある外国人は、脱退一時金を受け取らずに加入期間を維持する選択肢も検討できるようになりました。将来再び日本で働く可能性がある場合は、安易に脱退一時金を申請せず、加入期間を残しておくことも重要な戦略です。

老後に必要な資金はいくら?具体的な数字で考える

日本FP協会のリタイアメントプランニングによると、老後の生活資金は「人生の三大資金」の一つとされています。具体的にどれくらい必要なのか見ていきましょう。

老後資金の目安

一般的に、夫婦2人で月額約22万円の生活費が必要とされています。65歳で退職し、85歳まで生きると仮定した場合、20年間で約5,280万円が必要になる計算です。

世帯構成月額生活費(目安)20年間の総額年金収入(月額目安)不足額(月額)
夫婦2人(年金のみ)約22万円約5,280万円約15万円約7万円
夫婦2人(厚生年金あり)約22万円約5,280万円約22万円ほぼなし
単身(国民年金のみ)約15万円約3,600万円約6.9万円約8万円
単身(厚生年金あり)約15万円約3,600万円約14万円約1万円

この表からわかるように、国民年金だけでは老後の生活費を賄うのは難しいのが現実です。特に外国人の場合、日本での加入期間が短いことが多いため、年金受給額がさらに少なくなる可能性があります。

外国人のための資産形成戦略

年金だけに頼らない将来設計のために、以下の資産形成手段を活用しましょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは、自分で掛金を積み立てて運用する私的年金制度です。掛金が全額所得控除になるため、税金の節税効果が大きいのが特徴です。外国人でも日本の年金に加入していれば利用できます。

  • 自営業者:月額最大68,000円
  • 会社員(企業年金なし):月額最大23,000円
  • 会社員(企業年金あり):月額最大12,000円~20,000円

NISA(少額投資非課税制度)

NISAは投資で得た利益が非課税になる制度です。2024年からの新NISAでは、年間360万円まで非課税で投資できます。銀行口座の開設方法を参考に、まずは証券口座を開設しましょう。

積立投資のすすめ

外国人が日本で資産形成を行う際は、リタイアメントプランニングの基本を押さえた上で、毎月一定額を積み立てる「ドルコスト平均法」が有効です。長期・分散・積立の3原則を守ることで、為替リスクも含めたリスクを軽減できます。

将来設計のステップバイステップガイド

具体的な将来設計の手順を見ていきましょう。

ステップ1:現状を把握する

まず、自分の年金加入状況を確認しましょう。「ねんきんネット」に登録すれば、これまでの加入記録や将来の受給見込額をオンラインで確認できます。

ステップ2:将来のシナリオを立てる

以下の3つのシナリオを想定して計画を立てることをおすすめします。

  • 日本に永住する場合 :年金加入期間を最大化し、iDeCoやNISAで上乗せ。永住権の取得も視野に入れましょう。
  • いずれ帰国する場合 :社会保障協定の活用を検討。脱退一時金と期間通算のどちらが有利かシミュレーション。
  • 第三国へ移住する場合 :社会保障協定の有無を確認し、ポータビリティを考慮した計画を。

ステップ3:具体的な数値目標を設定する

目標退職年齢、必要な老後資金、毎月の貯蓄額を明確にしましょう。GaijinPotの年金ガイドなども参考に、自分の状況に合った計画を立てることが大切です。

ステップ4:定期的に見直す

ライフスタイルの変化や制度改正に合わせて、少なくとも年に1回は計画を見直しましょう。特に在留資格の更新時や転職時は、年金の切り替え手続きも忘れずに行ってください。

よくある質問(FAQ)

Q:短期滞在(3年未満)で帰国する場合、年金は払い損ですか?

A:いいえ。6ヶ月以上加入していれば脱退一時金を請求できます。ただし、社会保障協定国の方は、期間通算と一時金のどちらが有利か慎重に検討してください。

Q:海外に住んでいても日本の年金を受け取れますか?

A:はい。受給資格を満たしていれば、海外の銀行口座への振り込みも可能です。ただし、年に1回「現況届」の提出が必要です。

Q:配偶者が日本人の場合、年金に影響はありますか?

A:国際結婚の場合、配偶者が厚生年金加入者であれば、扶養配偶者として第3号被保険者になれます。この場合、保険料の負担なく年金加入期間に算入されます。

Q:フリーランスの場合、年金はどうなりますか?

A:フリーランスとして働く場合、国民年金のみの加入となります。老後の備えとして、iDeCoや国民年金基金の利用を強くおすすめします。

まとめ|今日から始める将来設計

日本で暮らす外国人にとって、年金の受給資格を理解し、将来の資金計画を立てることは、安心した生活を送るための重要なステップです。

今日からできるアクション:

  1. 「ねんきんネット」に登録して加入状況を確認する
  2. 社会保障協定の対象国かどうか調べる
  3. iDeCoやNISAの口座開設を検討する
  4. 月々の貯蓄目標を設定し、自動積立を開始する
  5. ファイナンシャルプランナーに相談する(無料相談も多数あり)

年金制度は複雑ですが、早めに行動することで選択肢が広がります。日本での生活を充実させるために、健康保険税金の知識と合わせて、総合的な将来設計を始めましょう。

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、日本企業・外資系企業で11年の実務経験。外国人の日本生活情報を発信。

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