介護保険制度と外国人の負担について

日本に住む外国人の介護保険制度を徹底解説。40歳以上の加入義務、2025年度の保険料率1.59%、月額負担額の計算方法、要介護認定の流れ、利用できるサービスの種類まで、外国人が知っておくべき介護保険の全情報をまとめました。
介護保険制度と外国人の負担について|加入義務・保険料・サービス利用を徹底解説
日本に住む外国人の方にとって、「介護保険」は馴染みのない制度かもしれません。しかし、40歳以上で日本に3か月を超えて在留する外国人は、日本人と同様に介護保険への加入が義務付けられています。「毎月の給与から引かれている介護保険料って何?」「将来、介護サービスを受けられるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本の介護保険制度の仕組みを外国人の視点からわかりやすく解説します。加入条件、保険料の計算方法、実際に利用できるサービス、そして注意すべきポイントまで、知っておくべき情報を網羅しています。
介護保険制度とは?基本の仕組みを理解しよう
介護保険制度は、2000年にスタートした日本の社会保障制度のひとつです。高齢化が急速に進む日本で、介護が必要になった方を社会全体で支える仕組みとして創設されました。
運営は市区町村が行い、40歳以上のすべての住民(外国人を含む)が保険料を負担します。介護が必要と認定された場合、介護サービスの費用の原則1割(所得に応じて2割・3割)を自己負担するだけで、さまざまなサービスを利用できます。
介護保険制度は日本の健康保険制度と並ぶ重要な社会保障の柱です。健康保険が病気やケガの治療をカバーするのに対し、介護保険は日常生活に支援が必要な状態をカバーします。
介護保険の被保険者区分
介護保険の被保険者は、年齢によって2つに区分されます。
| 区分 | 対象年齢 | 保険料の支払い方法 | サービス利用条件 |
|---|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 年金からの天引きまたは納付書 | 要介護・要支援認定を受けた場合 |
| 第2号被保険者 | 40歳〜64歳 | 健康保険料と一緒に徴収 | 特定疾病により要介護状態になった場合 |
外国人の介護保険加入義務|対象者と条件
「外国人も介護保険に入る必要があるの?」という質問をよく受けますが、答えは「はい」です。適法に3か月を超えて在留する40歳以上の外国人は、住民基本台帳に登録された時点で自動的に介護保険の被保険者となります。
加入が必要な外国人
以下の条件をすべて満たす外国人は、介護保険への加入が義務付けられています。
- 年齢が40歳以上であること
- 在留期間が3か月を超える中長期在留者であること
- 住民基本台帳に登録されていること
具体的には、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)、永住権、配偶者ビザ、留学ビザなどで在留している方が対象です。日本のビザ・在留資格について詳しくはこちらをご覧ください。
加入が不要な場合
- 在留期間が3か月以下の短期滞在者
- 観光ビザで滞在している方
- 40歳未満の方
なお、加入手続きは自動的に行われるため、別途の申請は不要です。ただし、住民登録を行っていない場合は加入漏れが発生する可能性があるため、届出サービスの手続きを忘れずに行いましょう。
介護保険料の計算方法と負担額
外国人の方が気になるのは、「毎月いくら支払うのか」という点でしょう。介護保険料は年齢と所得によって異なります。
40歳〜64歳(第2号被保険者)の保険料
会社員の場合、介護保険料は健康保険料と一緒に給与から天引きされます。
計算式:
- 月給の場合:標準報酬月額 × 介護保険料率
- 賞与の場合:標準賞与額 × 介護保険料率
2025年度の協会けんぽの介護保険料率は全国一律1.59%です(前年度の1.60%から引き下げ)。この保険料は労使折半で、実質的な自己負担は半分の約0.795%です。
具体的な保険料の目安:
| 月収(標準報酬月額) | 介護保険料(月額・本人負担分) | 年間負担額 |
|---|---|---|
| 20万円 | 約1,590円 | 約19,080円 |
| 30万円 | 約2,385円 | 約28,620円 |
| 40万円 | 約3,180円 | 約38,160円 |
| 50万円 | 約3,975円 | 約47,700円 |
2025年度の推計によると、40〜64歳の平均介護保険料は月額約6,202円(事業主負担分を含む)です。
65歳以上(第1号被保険者)の保険料
65歳以上になると、介護保険料は健康保険とは別に徴収されます。年金を受給している場合は年金から天引きされますが、外国人の方は年金がない場合も多く、その場合は市区町村から送付される納付書で支払います。
保険料は各自治体が条例で定めた基準額と本人・世帯の所得状況に基づいて決定されます。全国平均では月額約6,000〜7,000円程度ですが、自治体によって大きく異なります。
介護サービスの利用方法|要介護認定の流れ
介護保険料を支払っていても、実際にサービスを利用するには「要介護認定」を受ける必要があります。
要介護認定の申請手順
- 申請:市区町村の介護保険窓口で要介護認定の申請を行います
- 訪問調査:認定調査員が自宅を訪問し、心身の状態を調査します
- 主治医意見書:かかりつけ医が意見書を作成します
- 審査判定:コンピューター判定と介護認定審査会の審査を経て判定されます
- 認定結果通知:申請から原則30日以内に結果が通知されます
認定結果は「要支援1・2」「要介護1〜5」の7段階に分けられ、段階に応じて利用できるサービスの範囲と限度額が決まります。
外国人が申請時に注意すべき点
- 言語の壁:申請書類は日本語です。日本語に不安がある方は、多言語対応の相談窓口を利用しましょう
- 在留期間の確認:在留期間が短い場合、認定期間との関係で注意が必要です
- 通訳サポート:一部の自治体では訪問調査時の通訳サービスを提供しています
利用できる介護サービスの種類
要介護認定を受けた後、さまざまな介護サービスを利用できます。サービスは大きく分けて以下の種類があります。
在宅サービス
| サービス名 | 内容 | 利用場面 |
|---|---|---|
| 訪問介護(ホームヘルプ) | ヘルパーが自宅を訪問し、入浴・排泄・食事の介護や家事援助を行う | 自宅で生活を続けたい方 |
| 訪問看護 | 看護師が自宅を訪問し、医療的ケアを行う | 医療的な管理が必要な方 |
| 通所介護(デイサービス) | 施設に通い、入浴・食事・レクリエーションなどを受ける | 日中の見守りが必要な方 |
| 短期入所(ショートステイ) | 施設に短期間入所し、介護を受ける | 家族の休息や一時的な介護が必要な場合 |
| 福祉用具貸与 | 車いすや介護ベッドなどの福祉用具をレンタル | 日常生活の補助が必要な方 |
施設サービス
- 特別養護老人ホーム(特養):要介護3以上の方が対象。費用が比較的低い
- 介護老人保健施設(老健):リハビリを中心とした施設。在宅復帰を目指す
- 介護療養型医療施設:医療的ケアが必要な方向けの施設
自己負担額の目安
介護サービスの自己負担は原則1割です。ただし、2018年以降は所得に応じて2割・3割負担となる場合があります。
- 1割負担:本人の合計所得金額が160万円未満
- 2割負担:本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満
- 3割負担:本人の合計所得金額が220万円以上
高額介護サービス費制度により、月々の自己負担額が一定額を超えた場合は超過分が払い戻されます。
外国人が知っておくべき重要なポイント
帰国時の取り扱い
日本を離れて帰国する場合、介護保険の資格は喪失します。ただし、再来日して住民登録を行えば、再び加入することになります。年金制度のような脱退一時金の制度は介護保険にはありません。
介護保険料の滞納に注意
介護保険料を滞納すると、以下のペナルティが発生します。
- 1年以上の滞納:サービス利用時に全額自己負担(後日申請で7〜9割が返還)
- 1年6か月以上の滞納:保険給付の一時差止め
- 2年以上の滞納:自己負担が3割に引き上げ
滞納を防ぐため、口座振替の設定をお勧めします。日本の銀行口座の開設方法はこちらを参考にしてください。
社会保障協定の影響
日本と社会保障協定を結んでいる国の出身者は、年金保険料が免除される場合がありますが、介護保険についてはこの協定の対象外です。つまり、協定国の出身者であっても、日本に住む40歳以上の外国人は介護保険料の支払いが必要です。
外国人介護人材としての就労
介護分野で働きたい外国人の方も増えています。厚生労働省によると、外国人介護人材の受け入れには以下の4つの制度があります。
| 制度 | 特徴 | 在留期間 |
|---|---|---|
| EPA(経済連携協定) | インドネシア・フィリピン・ベトナムが対象 | 最長4年(資格取得後は更新可) |
| 在留資格「介護」 | 介護福祉士資格の取得が必要 | 更新制限なし |
| 技能実習 | 技能移転が目的 | 最長5年 |
| 特定技能 | 人手不足対応 | 特定技能1号は最長5年 |
日本での仕事探しに関する詳しい情報はこちらをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q: 40歳未満で日本に住んでいますが、介護保険料は支払いますか? A: いいえ。介護保険は40歳以上が対象です。40歳未満の方は保険料の支払いも、サービスの利用も対象外です。
Q: 介護保険料を支払っていますが、サービスを利用したことがありません。払い戻しはありますか? A: 残念ながら、介護保険料の払い戻し制度はありません。介護保険は社会保険の一種で、実際にサービスを利用するかどうかに関わらず保険料を負担する仕組みです。
Q: 母国に住む高齢の親を日本に呼び寄せた場合、介護保険に加入できますか? A: 在留資格を取得し、住民登録を行えば、40歳以上の方は介護保険に加入します。ただし、「家族滞在」や「特定活動」などの在留資格による制約がある場合があります。
Q: 日本語が話せなくても介護サービスを利用できますか? A: 利用可能です。一部の自治体や施設では多言語対応サービスを提供しています。また、地域の外国人コミュニティや国際交流協会で通訳ボランティアを紹介してもらえる場合もあります。
まとめ|介護保険は外国人にとっても大切なセーフティネット
日本の介護保険制度は、外国人を含む40歳以上のすべての住民を対象とした社会保障制度です。毎月の保険料負担は発生しますが、将来介護が必要になった場合には、自己負担1〜3割でさまざまな介護サービスを利用できる重要なセーフティネットです。
特に長期的に日本で生活する予定の外国人の方は、介護保険制度についてしっかり理解しておくことが大切です。不明な点があれば、お住まいの市区町村の介護保険窓口や多言語相談窓口に相談してみてください。
日本での生活全般については、日本の社会保障制度ガイドや税金に関するガイドも合わせてご覧ください。
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