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日本での老後・リタイアメント計画ガイド

相続と遺言の基礎知識ガイド

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年3月2日
相続と遺言の基礎知識ガイド

日本に住む外国人向けに、相続法の基本原則、遺言書の種類と作成方法、相続税の計算方法、遺留分制度、外国人特有の手続きと注意点を分かりやすく解説。国際相続のトラブル対策や専門家の選び方まで網羅した完全ガイドです。

相続と遺言の基礎知識ガイド|外国人が日本で知っておくべきこと

日本に住む外国人にとって、相続や遺言に関する法律は母国と大きく異なる場合があります。「自分が亡くなったら日本にある財産はどうなるのか」「配偶者や子どもに確実に財産を残すにはどうすればよいのか」——こうした疑問は、長期滞在者やリタイア後の生活を送る外国人にとって非常に重要なテーマです。

本記事では、日本における相続と遺言の基本的な仕組みを、外国人にも分かりやすく解説します。老後の生活設計の一環として、早めの準備を始めましょう。

日本の相続法の基本原則

日本の相続制度は「法の適用に関する通則法」に基づいています。この法律の第36条では、「相続は、被相続人の本国法による」と定められています。つまり、亡くなった方(被相続人)の国籍がある国の法律が適用されるのが原則です。

例えば、アメリカ国籍の方が日本で亡くなった場合、原則としてアメリカの相続法が適用されます。ただし、一部の国では「反致(はんち)」という制度があり、結果的に日本法が適用されるケースもあります。

法定相続人の範囲

日本の民法では、法定相続人は以下の順位で定められています:

順位相続人法定相続分(配偶者がいる場合)
常に相続人配偶者他の相続人との組み合わせで変動
第1順位子(直系卑属)配偶者1/2、子1/2
第2順位親(直系尊属)配偶者2/3、親1/3
第3順位兄弟姉妹配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

配偶者は常に相続人になる点が特徴的です。国際カップルの方は、この仕組みを早めに理解しておくことが大切です。

遺留分(いりゅうぶん)制度とは

日本の相続法には遺留分(いりゅうぶん)という独自の制度があります。これは、特定の相続人に最低限保証される遺産の割合のことです。たとえ遺言書で「全財産を第三者に渡す」と書いても、一定の親族には遺留分が認められます。

遺留分の権利を持つのは、配偶者、子ども、そして直系尊属(親)のみです。兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分の割合は以下の通りです:

相続人の構成遺留分の総額各人の遺留分
配偶者のみ遺産の1/2配偶者:1/2
配偶者と子ども遺産の1/2配偶者:1/4、子:1/4
子どものみ遺産の1/2子:1/2
直系尊属のみ遺産の1/3親:1/3

この制度は母国にない場合もあるため、外国人の方は特に注意が必要です。詳しくは日本の法律・トラブル対処ガイドもご参照ください。

遺言書の種類と作成方法

日本で認められている遺言書には主に3つの種類があります。外国人の方も、これらの方法で遺言書を作成できます。

1. 自筆証書遺言(じひつしょうしょ ゆいごん)

全文を自分の手で書く遺言書です。最もシンプルで費用がかかりませんが、形式不備で無効になるリスクがあります。

外国人の場合の特徴:

  • 署名のみでOK(捺印は不要)
  • 外国語での作成も可能
  • 法務局での保管制度を利用可能(2020年7月開始)
  • 相続開始後に家庭裁判所での検認手続きが必要(法務局保管の場合は不要)

2. 公正証書遺言(こうせいしょうしょ ゆいごん)

公証人が作成する遺言書で、最も確実性が高い方法です。日本語での手続きに不安がある方でも、通訳を同席させることができます。

メリット:

  • 公証人が内容を確認するため、形式不備のリスクがない
  • 家庭裁判所での検認手続きが不要
  • 原本が公証役場に保管されるため紛失・改ざんのリスクがない

費用の目安:

  • 遺産額に応じた手数料(1,000万円以下で17,000円、3,000万円以下で23,000円など)
  • 証人2名の立ち会い費用

3. 秘密証書遺言(ひみつしょうしょ ゆいごん)

内容を秘密にしたまま公証人に存在を証明してもらう方式ですが、実務ではあまり利用されていません。

外国人の方には、公正証書遺言の作成を強くおすすめします。手続きがスムーズで、相続開始後の手間も大幅に軽減されます。詳しくはNavigator Japanでも解説されています。

相続税の基礎知識

日本の相続税は、一定額を超える遺産に対して課税されます。外国人であっても、日本に住所がある場合や日本国内に財産がある場合は、相続税が課される可能性があります。

基礎控除額の計算

相続税には基礎控除があり、以下の計算式で求められます:

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

例えば、配偶者と子ども2人が法定相続人の場合: 3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円

遺産総額が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。

相続税の税率

課税される遺産額税率控除額
1,000万円以下10%なし
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

相続税の申告・納付期限は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10ヶ月以内です。日本の税金に関する詳しいガイドも合わせてご確認ください。

国税庁の公式サイトでも、外国に居住する相続人の手続きについて詳しく解説されています。

外国人特有の相続手続きと注意点

外国人が日本で相続手続きを行う際には、日本人とは異なるいくつかの注意点があります。

戸籍がない問題

外国人には日本の戸籍がないため、相続人であることを証明するための書類が通常と異なります。以下の代替書類が必要になることがあります:

  • 宣誓供述書(Affidavit):本国の公証人または在日大使館・領事館で作成
  • 出生証明書・婚姻証明書:本国の政府機関から取得
  • 署名証明(サイン証明):日本の印鑑証明書の代わりに在外公館で取得

海外在住の相続人がいる場合

相続人が海外に住んでいる場合、日本の印鑑証明書が取得できません。この場合は、在外公館(大使館・総領事館)で署名証明を取得する必要があります。

準拠法の確認

先述の通り、相続に適用される法律は被相続人の国籍によって決まります。しかし、遺言の「方式」については柔軟な規定があり、以下のいずれかの法律に適合していれば有効です:

  • 行為地法(遺言を作成した場所の法律)
  • 遺言者の本国法
  • 住所地法
  • 常居所地法
  • 不動産については所在地法

このため、日本に財産がある外国人は、日本の方式で遺言書を作成しておくのが最もスムーズです。GaijinPotでも外国人向けの相続手続きが分かりやすく解説されています。

国際相続で起こりやすいトラブルと対策

国際相続では、日本特有の複雑な問題に直面することがあります。事前に対策を講じておくことが重要です。

よくあるトラブル

  1. 二重課税の問題:日本と母国の両方で相続税が課税される可能性がある
  2. 遺言書の有効性:母国で作成した遺言書が日本で認められないケース
  3. 銀行口座の凍結:被相続人の口座が即座に凍結され、手続き完了まで引き出し不可
  4. 不動産の名義変更:外国人相続人が日本の不動産を相続する際の登記手続きの煩雑さ
  5. 相続放棄の期限:日本では相続開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄の手続きが必要

対策のポイント

  • 日本国内の財産リストを作成しておく(不動産、銀行口座、証券、保険など)
  • 日本語の公正証書遺言を作成する(母国の遺言書とは別に)
  • 税理士や弁護士に相談し、二重課税の回避策を確認する
  • 年金や社会保障についても、相続時の取り扱いを確認しておく
  • 配偶者がいる場合は、資産形成・ライフプランニングの一環として早めに相続計画を立てる

Japan Handbookでは、在日外国人向けのエステートプランニングについて英語で詳しく解説されています。

相続に備えて今からできること

相続や遺言の準備は「終活(しゅうかつ)」とも呼ばれ、日本では近年大きな注目を集めています。外国人の方も、以下のステップで準備を進めることをおすすめします。

今すぐ始められるステップ

  1. 財産の棚卸し:日本と母国にある全ての財産をリストアップする
  2. 法定相続人の確認:日本法と母国法の両方で、誰が相続人になるか確認する
  3. 公正証書遺言の作成:日本にある財産については、日本の公証役場で遺言書を作成する
  4. エンディングノートの作成:法的効力はないが、希望や情報をまとめておく
  5. 専門家への相談:国際相続に詳しい弁護士・税理士・司法書士に相談する

終活(終末期の準備)ガイドでは、より具体的な準備の進め方を解説しています。

専門家の選び方

国際相続は一般的な相続よりも複雑なため、以下の専門性を持つ専門家を選びましょう:

  • 外国人の相続手続き経験がある弁護士・司法書士
  • 国際税務に精通した税理士
  • 英語(または母国語)で対応可能な事務所

Investments for Expatsでは、2025年最新の相続税情報が英語でまとめられています。

まとめ

日本での相続と遺言に関する基礎知識をまとめました。外国人にとって重要なポイントは以下の通りです:

  • 相続は被相続人の本国法が原則適用されるが、日本にある財産は日本法の影響も受ける
  • 遺留分制度により、特定の親族には最低限の相続分が保証される
  • 公正証書遺言が最も確実で、外国人にも作成可能
  • 相続税の基礎控除は3,000万円+(600万円×法定相続人数)
  • 10ヶ月以内に相続税の申告・納付が必要
  • 早めの準備が、トラブルを防ぐ最善の方法

日本での長期生活やリタイアメントを考えている方は、相続と遺言の準備を後回しにせず、今から少しずつ進めていきましょう。老後・リタイアメント計画と合わせて、総合的な人生設計を立てることが大切です。

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、日本企業・外資系企業で11年の実務経験。外国人の日本生活情報を発信。

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