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日本での資産形成・ライフプランニングガイド

国際相続の基礎知識と準備ガイド

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年3月2日更新日:2026年3月3日
国際相続の基礎知識と準備ガイド

日本に住む外国人のための国際相続完全ガイド。相続税の課税範囲、必要書類の準備、準拠法の決定方法、遺言書の作成手順、専門家の選び方まで、渉外相続の基礎知識と実務的な準備方法をわかりやすく徹底解説します。早めの準備で安心の相続対策を。

国際相続の基礎知識と準備ガイド|外国人が知るべき日本の相続制度

日本に住む外国人にとって、相続の問題は避けて通れない重要なテーマです。国際相続(渉外相続)は、被相続人や相続人が外国籍であったり、遺産が複数の国にまたがる場合に発生します。日本の相続税率は世界最高水準で、最大55%にも達するため、事前の準備が不可欠です。本記事では、日本に住む外国人が国際相続で押さえておくべき基礎知識と実務的な準備方法を詳しく解説します。

国際相続とは?渉外相続の基本を理解する

国際相続(渉外相続)とは、相続に関わる当事者が海外にいる場合や、遺産が海外にある場合の相続を指します。具体的には以下のようなケースが該当します。

  • 被相続人(亡くなった方)が外国籍の場合
  • 相続人に外国籍の方が含まれる場合
  • 遺産が海外に所在する場合
  • 相続人が海外在住の場合

日本の国際私法(通則法)第36条では「相続は、被相続人の本国法による」と定められています。つまり、日本で亡くなった場合でも、被相続人の国籍がある国の法律が原則として適用されます。ただし、日本に所在する不動産については日本法が適用される場合もあり、複雑な法律関係が生じることがあります。

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国際相続では、日本と海外の法制度の違いを理解することが重要です。例えば、日本では法定相続分が民法で細かく定められていますが、国によっては遺言の自由度が高い場合もあります。国際相続の全体像を理解することが、スムーズな手続きの第一歩となります。

日本の相続税が外国人に適用されるケース

日本の相続税は、外国人であっても一定の条件下で課税されます。2017年4月の法改正により、課税範囲が大きく変わりました。以下の表で、あなたがどのケースに該当するかを確認しましょう。

条件課税範囲対象資産
日本に住所あり+Table IIビザ(永住者・定住者・配偶者等)全世界資産日本国内外すべて
日本に住所あり+就労ビザ(10年以上居住)全世界資産日本国内外すべて
日本に住所あり+就労ビザ(10年未満居住)国内資産のみ日本国内の資産
日本に住所なし(出国5年以内・10年以上居住歴)全世界資産日本国内外すべて
日本に住所なし(出国5年超)国内資産のみ日本国内の資産

特に注意が必要なのは、永住権を持つ外国人は居住期間に関係なく全世界資産に対して日本の相続税が課されるという点です。また、日本を離れた後も最長5年間は日本の相続税が全世界資産に対して適用される可能性があります。

日本の相続税率は累進課税で、以下のように段階的に高くなります。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%なし
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

日本の税金制度について詳しく知りたい方は、関連ガイドもご確認ください。

国際相続に必要な書類と準備

国際相続の手続きには、通常の相続と異なる書類が必要です。特に外国籍の方は戸籍謄本が存在しないため、代替書類の準備が重要になります。

外国籍の被相続人に必要な書類

  • 死亡証明書(本国発行のもの)
  • 出生証明書(親族関係の証明)
  • 婚姻証明書
  • パスポートのコピー
  • 在留カードのコピー
  • 相続証明書(戸籍謄本の代わり)

海外在住の相続人に必要な書類

外国籍の相続人は日本の印鑑登録制度がないため、以下の代替書類が必要です。

  • 署名(サイン)証明書:在外日本公館で取得。印鑑証明の代わりとなる
  • 在留証明書:住民票の代わりとなるもの
  • 相続関係を示す宣誓供述書:公証人の認証を受けたもの

これらの書類は取得に時間がかかるため、早めの準備が大切です。相続税の申告期限は相続開始から10か月以内と決められており、海外とのやり取りを考えると十分な余裕を持って手続きを開始する必要があります。

日本の届出サービスの仕組みを理解しておくと、書類準備がスムーズになります。

準拠法の決定と遺産分割の進め方

国際相続では、どの国の法律に基づいて遺産分割を行うかという「準拠法」の問題が最も重要です。

日本の通則法による準拠法の決定

日本の通則法(法の適用に関する通則法)第36条では、「相続は、被相続人の本国法による」と規定しています。これは「統一主義」と呼ばれる考え方で、すべての相続財産に同一の法律を適用するものです。

一方、フランスやイギリスなどは「分割主義」を採用しており、不動産は所在地の法律、動産は被相続人の住所地の法律が適用されます。この違いが国際相続を複雑にする要因の一つです。

遺産分割協議のポイント

国際相続における遺産分割協議では、以下の点に注意が必要です。

  1. 時差の問題:相続人が複数の国に住んでいる場合、オンライン会議を活用する
  2. 言語の問題:遺産分割協議書は日本語と関係する言語の両方で作成する
  3. 送金の問題:海外送金には手数料がかかり、為替リスクもある
  4. 認証の問題:各国の公証制度の違いを理解する

日本での国際結婚をされている方は、配偶者間の相続について特に注意が必要です。

海外資産の相続手続き

日本国内の資産だけでなく、海外にある資産の相続手続きも重要です。海外資産の相続には、各国固有の手続きが必要になります。

海外資産の種類別対応

  • 海外不動産:所在国の法律に従った登記手続きが必要。プロベート(検認裁判)が必要な国もある
  • 海外銀行口座:死亡が確認されると口座が凍結されるため、早めの手続きが重要
  • 海外有価証券:各国の証券取引のルールに従った名義変更が必要
  • 海外の年金:国によって遺族年金の制度が異なる

二重課税の回避

日本と海外の両方で相続税が課される場合、二重課税を避けるための「外国税額控除」制度があります。日本で申告する際に、海外で支払った相続税額を控除できます。ただし、控除額には上限があるため、専門家に相談することをお勧めします。

日本の年金制度との関連も把握しておきましょう。

遺言書の作成と国際的な効力

国際相続において、遺言書の作成は最も効果的な準備の一つです。遺言書があれば、遺産分割協議を省略でき、手続きが大幅にスムーズになります。

日本で有効な遺言書の種類

種類特徴メリットデメリット
自筆証書遺言全文を自分で手書き費用がかからない形式不備で無効になるリスク
公正証書遺言公証人が作成確実性が高い費用がかかる
秘密証書遺言内容を秘密にできるプライバシー保護手続きが複雑

外国人が日本で遺言書を作成する場合、公正証書遺言が最もお勧めです。公証人が関与するため、形式の不備による無効リスクが低く、遺言書の保管も確実です。

国際的な遺言の効力

遺言の方式については、「遺言の方式に関する法律」に基づき、以下のいずれかの法律に適合していれば有効とされます。

  • 行為地の法律(遺言を作成した国の法律)
  • 遺言者の本国法
  • 遺言者の住所地の法律
  • 不動産に関する遺言については、その所在地の法律

複数の国に資産がある場合は、各国ごとに遺言書を作成することが推奨されます。永住権や帰化を検討している方は、法的地位の変更が遺言にも影響する点に注意してください。

専門家への相談と費用の目安

国際相続は複雑なため、専門家への相談が不可欠です。適切な専門家を選ぶことが、スムーズな手続きの鍵となります。

相談すべき専門家

  • 弁護士:遺産分割の紛争、準拠法の判断、国際的な法律問題
  • 税理士:相続税の申告、外国税額控除、節税対策
  • 司法書士:不動産の相続登記
  • 行政書士:書類作成、在外公館との連絡

費用の目安

国際相続の専門家費用は通常の相続より高額になります。おおよその目安は以下の通りです。

  • 弁護士費用:50万円〜200万円(遺産額や複雑さにより変動)
  • 税理士費用:30万円〜100万円(申告内容により変動)
  • 司法書士費用:10万円〜50万円(登記件数により変動)
  • 翻訳・認証費用:5万円〜30万円

日本の銀行口座・金融サービスの知識も、遺産の管理や分配において役立ちます。

今すぐ始める国際相続の準備チェックリスト

国際相続に備えて、今から準備できることがあります。以下のチェックリストを参考に、早めの対策を心がけましょう。

  • [ ] 資産の棚卸し:日本国内外のすべての資産をリストアップする
  • [ ] 準拠法の確認:自分の国籍国の相続法を確認する
  • [ ] 遺言書の作成:公正証書遺言を日本と母国の両方で作成する
  • [ ] 必要書類の準備:出生証明書、婚姻証明書など基本書類を整理する
  • [ ] 専門家の選定:国際相続に詳しい弁護士・税理士を見つける
  • [ ] 相続人への情報共有:資産の場所や連絡先を家族に伝える
  • [ ] 保険の見直し:生命保険の受取人や保障内容を確認する
  • [ ] 定期的な見直し:在留資格の変更や資産状況の変化に応じて更新する

国際相続は事前準備によって手続きの負担を大幅に軽減できます。「まだ先のこと」と思わず、今のうちから計画的に準備を進めることをお勧めします。国税庁の公式情報もあわせて確認しておきましょう。

まとめ

国際相続は、通常の相続に比べて準拠法の問題、書類の準備、海外とのやり取りなど、多くの複雑な課題があります。特に日本の相続税は最大55%と世界最高水準であり、外国人であっても条件次第で全世界資産に課税されます。

最も大切なのは、早めの準備専門家への相談です。遺言書の作成、必要書類の整理、資産の棚卸しなど、今すぐ始められることから取り組みましょう。国際相続の手続きは時間がかかるため、相続発生後10か月の申告期限を意識して、余裕を持った計画を立てることが成功の鍵です。

日本での生活全般についてはビザ・在留資格ガイドもご参照ください.

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、日本企業・外資系企業で11年の実務経験。外国人の日本生活情報を発信。

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